大切な実家を売却するために知っておきたい状況別の正しい進め方

あなたは、実家を売却するうえでの親族間との関係や進め方で、どこからはじめればよいか?何が重要なのか?を悩んでいるのではないでしょうか。

実は、「実家を売る」とひとことに言っても、置かれている状況によって売却の進め方や重要な点は大きく変わってきます。

なぜなら、「所有者である親が住んでいる実家を売ること」と「老人ホームに入所した親の実家を売ること」と「相続した実家を売ること」では、協議を行う相手、手続きや方法・注意点が大きく変わってくるからです。

ここでは、あなたの置かれている状況別に親族との協議の方法や実家売却の進め方、重要な点をご説明します。

読み終えて頂ければ今あなたが実家売却において行わなければならないこと、重要視することが理解でき、具体的な行動に移すことができます。

 

目次

第1章 実家売却における3つのパターン

 

子供(もしくは親族)であるあなたが実家を売ることを考えている場合、次の3つのパターンのどれかにあたるのではないでしょうか。

実家売却の3パターン

具体的な状況をひとつひとつ説明します。

 

1-1.親の代理人となって実家を売却する point:代理人契約

親が高齢で体が弱くなってきたなどの事情で住替えを検討する場合、自身で不動産売却や引っ越しの全てを行うことは難しいでしょう。特に80歳を超えた年齢で全てを一人で行うことはほとんどないのではないでしょうか。

高齢の親が住替えを行う場合、次のような事例が想定されます。 

  • 足腰が弱く、上り下りが危険な階段がある戸建から、マンションへの住み替え
  • 車社会である郊外から、徒歩圏内で生活ができる都心部への住替え
  • 子供が独立し、広くなりすぎた家からよりコンパクトな家への住替え
  • 家を売却した資金を利用して、老人ホームへの入所

このような場合で、高齢の親が一人で不動産売却を進められないときは、親にかわり子供が代理人となって不動産売却を進めることが出来ます。ちなみに、代理人には、子供がならなくてはいけないという法律はないので、親が委任を行えば、誰でもなることが出来ます。

詳しい手順は、【第2章】をご覧ください。

 

1-2.認知症の親が所有する実家を売却する:point成年後見人制度

親が認知症などで、不動産売却についての意思判断が出来ない場合、いくら親族であっても親が所有している不動産を売却することができません。

このような場合、「成年後見制度」を利用して、親の後見人が、親に代わり不動産を売却することになります。

成年後見制度を利用した不動産売却については【第3章】をご覧ください。

 

1-3.相続した実家を売却する:point相続争いは資産家だけの話ではない

テレビなどのメディアの影響もあり、相続争いは資産が多い家のことかと思われがちですが、実態は異なります。

特に、相続人が複数で、相続財産の主たるものが実家つまり不動産だけであった場合は注意が必要です。

実際に相続トラブルは、司法統計年報をよると、資産1,000万円超~5,000万円以下が最も多く「4割」超、次に1,000万円以下が「3割」超と、05,000万円の資産が全体の7割を占めています。

相続トラブルグラフ

多くの場合、親の遺産のうち半分以上を占めるのは、不動産(実家)です。

不動産が不可分(分けられない)財産であるため、兄弟・親族間の意見の食い違いで争いが生じやすくなります。

相続争い、及び相続した実家の売却については、【第4章】をご覧ください。

以上、3つのパターンについて、2章以降で詳しく説明します。それぞれ1章で完結するように説明していますので、あなたの置かれている状況に該当する章をご覧ください。

「実家を売却する」ということは、親や他の相続人との関係などで問題が生じやすい行動でもあります。

その実、親族間の問題が実家売却や相続の知識不足に起因して生じていることはしばしば見受けられます。

正しい知識を身に着け、円満に安心した売却ができるようにしましょう。

 

第2章 親の代理人となって実家を売却する point:代理人による契約

 

親が入院している、高齢であるなどの理由で、親一人では、不動産売却を進めることができないことはしばしばあります。

この場合、親の意思能力(自宅を売るという判断能力)がはっきりしていれば、親は子供や親族(第三者でも良い)宛に委任状を作製し、代理人を選ぶことにより、不動産売却を進めることができます。

親が認知症を発症している場合は、代理人での売却は出来ないため、【第3章】をご覧ください。

 

2-1.親の代理人として売却を進める手順

親の代理人として子供が不動産売却を進める場合は、次の手順で不動産売却を進めます。

代理人契約の手順

各項目について、ひとつひとつご説明します。

 

2-2.売却前に親・親族との話し合いを行う

親が自身の考えで不動産の売却や住替えを行う場合は、兄弟や親族との関係に亀裂が生じることは少ないでしょう。

しかし、もし子であるあなたが高齢の親を心配し、実家売却や住み替えを親に提案するとしたら、親や親族(特に兄弟)への配慮が必要になります。

 

2-2-1.親への配慮

「実家には物が多く片付いていない」、「将来的な介護に備え親を近くに呼び寄せたい」など、実家に関する問題を親と話し合わなければいけない時期は来ます。

この話し合いにおいて、親に単刀直入に片付けや住み替えを薦めることは避け、「親の心配をし、親の幸せの為に」提案を行うようにしてください。

×間違った提案の仕方
介護や相続後などに苦労するのは子供だから「親としてちゃんとしてほしい」という姿勢で提案を行う。

〇親に伝わる提案の仕方
親が考える幸せがどのようなものなのか、実現するために子供として手伝えることはあるかという親の意思を尊重する姿勢で提案を行う。

重要な点としては、介護や相続後の片付けを行う自分(子供)の為の売却や住み替えではなく、最大限「親の幸せ」を優先することです。

「今後どのようなに過ごしたいか」などのお話合いから始めればよいかと思います。「子供の近くに住みたい」や「このまま実家に住み続けたい、生活に不憫がでてきたら老人ホームに入れてほしい」など、住まいに関して親の意見が聞ければ、それを可能な限り実現できる方法を模索していきましょう。あまり、意見を主張しすぎると相手も頑なになりますので、希望を聞き、提案するような形が望ましいと思います。

 

2-2-2.兄弟・親族への配慮

いくら親の意思で売却を行った場合でも、あなたが代理人として売却や住み替えを手伝うのであれば、その他の兄弟や近しい親族には事情を話しておきましょう。

特にあなたと同様に兄弟にとっては、大切な実家であることは変わりありません。

兄弟が代理人となって、親族に内緒で実家を売却したとなれば、違和感を覚えることでしょう。

親と話し合って決定したことであれば、同意まで得る必要はありませんが、事情や経緯などは説明しておくことが、その後の相続のことも考えると良いと思います。

もちろん、伝えられない事情がある場合は伝えなくとも不動産売却は進められます。

 

2-2-3.認知症の疑いがある場合

「認知症」と「もの忘れ」は異なります(詳細は第3章をご参照ください)。もし、親の忘れやすい状態が頻発しているような状況下で、不動産売却を進める場合には、売却前に司法書士や弁護士に判断能力の確認を行ってもらいましょう。

実は、相続が発生したあと、親族から「親が認知症だったのに、勝手に不動産売却を進めた」という理由での争いは多いものです。

有資格者にきちんとした確認をとって進めれば防げる争いなので、売却前に確認を行うようにしてください。

 

2-3.親が子供宛に不動産売却に関する委任状を作製し、子供が代理人となる。

親が子供に不動産売却の代理を依頼する場合、親は子供宛に委任状を作成し、子供は委任状を受け取ることにより、代理人となります。

親が代理人を選定する委任状には、特定の書式があるわけではありません。

ただし、白紙の委任状は、代理人に委任する行為の指定があいまいとなる為、下記条項を記載しておくと良いでしょう。

委任状に記載する委任内容

  • 不動産の売却に関する交渉、媒介契約の締結。
  • 売買契約の締結、その他関連書類の締結。
  • 売買契約に基づく売買代金(手付金を含む)その他清算金等の受領。
  • 所有権移転登記申請及び登記必要書類の引渡し。
  • これらに付帯する一切の権限。

以上を記載することにより、代理人の行える行為が明確になります。

委任状作成の際は、親に「印鑑証明書」を取得してもらい、実印で委任状に捺印するようにしましょう。

委任状のテンプレート( Word用 )を下記に添付しておきますので、参考にしてください。

不 動 産 売 却 委 任 状(ダウンロードはこちら)

2-4.代理人が不動産会社を選定し、不動産売却の媒介契約を締結する。

委任状の作成が終わり、代理人の手元に委任状がある状況になったら、代理人は親の代わりに売却を依頼する不動産会社の選定に入ります。

不動産は親の大切な資産ですので、売却を依頼する不動産会社は慎重に、信頼できるところを選びましょう。また、代理人に兄弟がいる場合などは、親族間での問題を避けるため、代理人一人で不動産会社を選定するのではなく、相談の上決定するようにしましょう。

売却を依頼する不動産会社が決定したら、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約とは、不動産会社に販売を依頼する書類です。

媒介契約には、所有者が署名捺印を行う欄が必ずある為、委任状を不動産会社に提示したうえで、次のように記入します。

 

■媒介契約書署名・捺印の具体例

・所有者記載欄
 東京都世田谷区代田●● ☚親の住所

 山田 太郎 ☚親の氏名

 上記代理人

 東京都渋谷区上原●● ☚代理人の住所

 山田 一郎 ☚代理人の氏名   印 ☚代理人の印鑑(認印可)

多くの不動産会社では、媒介契約の際にも親に本人確認を行います。司法書士による確認を行う不動産会社もあるため、事前に親に伝えておくとスムーズです。

 

2-5.買主が見つかったら、代理人が売買契約を締結する。

代理人は親の代わりに売買契約を締結できます。売買契約締結前にも所有者である親や近しい親族には相談し、円滑に進むように心がけましょう。

売買契約書にある署名・捺印欄には、媒介契約と同様の方法で署名・捺印を行います。

売買契約書には、実家の引渡時期や残代金決済までに行うべきことが記載されている為、親の引っ越しが問題なくできるか、引渡までに実家の片付けを行えるかなどに留意して、良く理解したうえで契約を進めて下さい。

 

2-6.司法書士が親の意思確認・本人確認を行い、登記書類を作製してもらう。

子供が代理人となって進める契約であっても、不動産の所有権は「親」にあります。

買主に所有権を移転する登記を行う司法書士は、親つまり本人の意思が契約書の通りで間違いないかを直接面前で確認する必要があります。

高齢の親である場合は、親の判断能力の確認も合わせて行い、所有権移転登記の必要書類に「生年月日」「住所」「氏名」などを自署で記入してもらう必要があります。

親には、司法書士と面談する必要がある旨を事前に伝えておくとスムーズです。

 

2-7.代理人が残代金を受領し、親から買主に所有権が移転する。

事前に司法書士の面談を終え、買主への所有権移転の書類の作成が完了している場合、所有者である親が出席できなくても残代金決済を代理人が行うことが出来ます。

残代金は一時的に代理人が受領することになりますが、出来るだけ早い段階で親名義の口座に入金するようにしましょう。(親から子への贈与と疑われないため)

 

2-8.居住用財産の3,000万円特別控除を利用できる

親が居住している実家であれば、売却に譲渡益が出た場合でも居住用財産の3,000万円特別控除を利用できます。

居住用財産の3,000万円特別控除については、「こちら」を参照下さい。

特例が利用できる場合とできない場合では、最大で約609万円も支払う税金がことなるため、適用要件を確認するようにしましょう。

 

第3章 自分で意思判断ができない親の実家を売却する:point成年後見制度

 

親が認知症を発症していて、不動産売却に関する判断が出来ない場合、子供や親族が代理人となっても不動産を売却することはできません。

このような場合は、成年後見制度を利用して売却を進めることになります。

この章では、成年後見制度の概要の説明と売却の進め方について説明をします。

 

3-1.成年後見制度を利用した不動産売却

成年後見制度を利用した不動産売却を次のような手順で進めます。

成年後見制度売却手順

ひとつひとつ説明します。

 

3-2.成年後見制度の概要を理解する

成年後見制度は、知的障害、精神障害、認知症などにより判断能力が十分でない方が詐欺や日常生活において不利益を被らないように 家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。

 

3-2-1.認知症を発症すると不動産売却が出来ない?

多くの方が認知症を発症すると不動産売却が出来なくなると認識されています。

ただ、すべての場合において、認知症だから不動産売却の能力がないと考えるのは早計かもしれません。

認知症かどうかは医師が判断しますが、不動産売却に関する判断能力があるかどうかは、実務において司法書士や弁護士が判断を行います。

もちろん、判断において医師の診断や助言は大きな材料となり得ますが、実際の取引においてはそれが全てではないと考えられます。

また、認知症の疑いがあるが、初期段階のため、認知症か脳の老化がもたらす物忘れなのかの判断がつかない場合も有り得ます。

認知症ともの忘れ

後述しますが、成年後見人制度は、不動産売却が終われば終了するものではなく、本人(つまり、親)が病気から回復するか亡くなるまでが任期となります。

不動産売却を目的として成年後見人制度の利用を考えている方は、制度を申請する前に、本当に親に意思判断能力がないか、司法書士や不動産会社に相談するようにしましょう。

司法書士や不動産会社により意見が分かれる場合もあります。

 

3-2-2.成年後見人の役割は本人の資産の維持管理

成年後見人による不正は新聞などのメディアでもしばしば取り上げられます。

事実、成年後見人の不正を監視する「後見監督人」の選任件数は増加傾向にあり、家裁が2015年に選任したのは過去最多の約4800件に上ります。不正を行う大半が親族の後見人によるものですが、中には弁護士・司法書士による不正も存在します。

本人の親族が成年後見人になる場合でも、「他人の財産を預かって管理している」という意識をもって取り組んでください。

 

3-2-3.成年後見制度は2種類

具体的な成年後見制度の概要をご説明します。

成年後見制度には、次の2種類があります。

  • 任意後見制度:判断能力があるうちに行う

将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ契約により自ら選んだ任意後見人を選んでおく制度です。(詳細は、3-2-4をご覧ください。)

 

  • 法定後見制度:判断能力が不十分になった後に行う

本人の判断能力が不十分になってから成年後見制度を利用する場合は、家庭裁判所によって成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が選ばれる法定後見制度が利用できます。

本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの制度を利用することが出来ます。(詳細は、3-2-5をご覧ください。)

 

3-2-4.任意後見制度

任意後見制度は、本人の判断能力が十分なうちに自ら代理人(任意後見人)を選んでおく制度です。

生活の補助や代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人の作成する公正証書によって決めておきます。

■任意後見契約の費用

任意後見契約には次のような費用がかかります。

  • 公正証書作成の基本手数料 11,000

  • 登記嘱託手数料 1,400

  • 法務局に納付する印紙代 2,600

  • その他雑費

■任意後見契約の効力の発生

任意後見契約を締結した後に、契約の効力が発生するまでの流れは次の通りです。

任意後見の手順

 

3-2-5.法定後見制度

任意後見人と異なり、法定後見人は本人が選ぶことが出来ず、家庭裁判所で選任されます。

下記図は、平成27年における本人(親)と成年後見人の関係を表したものです。

後見人と本人の関係

法定後見制度では、全体の3~4割は親族が後見人に選任されますが、全体の6~7割は弁護士や司法書士が選任されています。また、成年後見人を選任した家庭裁判所の判断には不服申し立てを行うことが出来ません。

法定後見制度は、本人の判断能力に応じて次の3種類の制度を利用できます。

法定後見の種類

■法定後見制度の申立てに必要な書類・費用等

申立てに主に必要な書類や費用は次のとおりです。

  • 申立書 (家庭裁判所)

  • 成年後見用診断書 (家庭裁判所)

  • 申立手数料 (1件につき800円分の収入印紙)

  • 登記手数料 (2,600円分の収入印紙)

  • 郵便切手

  • 本人の戸籍謄本など

※本人の判断能力を判定するために、医師による鑑定を行う場合があり、その場合、鑑定料も申立人の負担となります。
※詳細は家庭裁判所にお問合せ下さい。

■法定後見制度の手続の流れ:期間3~4ヶ月位

法定後見の手順

 

3-3.後見人の選任を受ける

家庭裁判所の選任を受けた後見人でないと不動産売却を行うことは出来ません。また、法定後見制度の保佐人や補助人は代理権を与える審判が必要になります。

後見人は、本人の居住用財産でなければ、家庭裁判所の許可を得ず売却を行うことができます。(本人の居住用不動産の場合は、許可が必要)

 

3-4.不動産会社の選定

後見人は不動産会社の選定を行い、媒介契約を締結することが出来ます。後見人は、法務局交付の「後見登記事項証明書」を以って、本人の後見人であることを不動産会社に証明し、媒介契約を締結するため、事前に取得しておきましょう。

媒介契約書には下記のように署名・捺印を行います。

■媒介契約書署名・捺印の具体例
・所有者記載欄

東京都世田谷区代田●● ☚親の住所

山田 太郎 ☚親の氏名

山田太郎成年後見人

東京都渋谷区上原●● ☚後見人の住所

山田 一郎 ☚後見人の氏名   印 ☚後見人の印鑑(認印可)

 

3-5.売買契約を締結する

買主が決定したら、後見人は「停止条件付」の売買契約を締結します(居住用不動産の場合に限る)。

「停止条件」の内容は、家庭裁判所に申し立てを行う「居住用不動産の処分についての許可の審判」についてとなります。

家庭裁判所の許可が先ではなく、イメージとしては売買契約を締結してから、「この内容で進めて問題がないか」家庭裁判所に申し立てを行うこととなります。(これを「居住用財産処分」の申立てといいます。)

家庭裁判所からの許可を得られなかった場合は、売買契約も無効となります。

 

3-6.家庭裁判所からの許可を得る

前述のように、後見人が居住用不動産の処分を行う場合は、家庭裁判所からの審判を得なければなりません。

本人(被後見人)が単独で行った売却は取り消しの対象となり、後見人が家庭裁判所の許可を得ないで行った売却は無効となります。

居住用財産処分の申立てについては、こちらを参照下さい。

 

3-7.買主への所有権移転

後見人が売買代金を受領し、各種支払い等も代理となって行います。

司法書士が家庭裁判所からの居住用不動産の処分の許可を確認し、親から買主への所有権移転を行います。

 

3-8.居住用財産の3,000万円控除を利用できる

成年後見制度を利用した売却であっても、親が居住している実家であれば、居住用財産の3,000万円特別控除を利用できます。

親が老人ホームなどに入所している場合は、住まなくなってから3年目の年末までの譲渡が対象の為、注意が必要です。

居住用財産の3,000万円特別控除については、売却後では遅い!自宅や実家を売る前に絶対抑えるべき税金を徹底解説を参照下さい。

 

第4章 相続した実家を売却する

 

売却もせず、賃貸もしない空き家状態にしている実家をどのようにするべきかお悩みの方も多いのではないでしょうか。

または、管理・維持が難しく売却や賃貸を模索しても、他の相続人との意見が合わなかったり、そもそも売却や賃貸の需要がない地域だったりという場合もあると思います。

この章では、相続を争いにしない為に、注意すること・行うべきことを中心にご説明していきます。

後述しますが、実際の売却の手順は所有している不動産の売却と変わらない為、相続空き家の3,000万円控除がポイントとなります。

 

4-1.相続争いにならないための注意点

冒頭で示した通り、相続争いは大きな資産の家のものだけではありません。司法統計によると5,000万円以下の相続トラブルが全体の7割を占めます。

相続争いの要因の多くは実家(不動産)だとも言われています。

不動産は売却し、現金化しなければ相続人で平等に分けることが難しく、家を継いだ家族が住んでいる場合は、争いに発展しやすいと考えられています。

 

4-1-1.相続争いの原因

「家族の仲が良いからうちはもめない」そのようにお考えの方も多いですが、現実には多くの相続争いが起きています。

 どの家庭にも起こりえる相続争いの原因をいくつかご説明します。

 ①核家族化
日本はかつて家督相続制度でした。長男が家を継ぎ、財産も独占し、家と財産を守るといった制度です。

しかし、核家族化が進む現代では長男や次男に関係なく「権利はみな平等」という考え方が当たり前で、各相続人が平等に権利を主張するようになってきました。

民法でも法定相続分(※1)が存在し親が亡くなった後の子の相続分は平等とされています。

1法定相続分
法定相続分

②格差社会
テレビなどのメディアでも取り上げられていますが、日本は収入の二極化など格差社会であり、貧富の差が大きくなっています。

兄弟間でも格差は存在し、嫉妬や妬みがトラブルの原因となることも多くあります。

③離婚・再婚
現在の日本では、3組に1組が離婚するといわれています。熟年離婚も多く、生前に親が再婚した義父・義母との相続争いも増えています。

家族関係の複雑化は、相続も複雑にし、トラブルの原因と言われています。

④先行き不透明な時代
現在は、終身雇用などで安定を得られる時代ではなく、景気も世界経済との密接な関係から先が読みにくくなりました。

権利として平等にもらえる相続財産については、譲ることなく主張をし、争いごとになることも多いようです。

⑤老後の意識変化
かつてのような拡大家族(親と子が同居している家族)から核家族化が進み、高齢者世帯(高齢者の単身世帯、高齢者夫婦だけの世帯)が増えてきました。

資産に対する考え方も徐々に変化し、資産は老後の生活を豊かにするものと考える世帯が多くなってきています。

内閣府意識調査

データ引用:内閣府

4-1-2.相続争いを避けるヒント

被相続人(亡くなった人)は遺言によって相続人の相続分を指定できます。(指定相続分と言います。)指定相続分は法定相続分と一致していなくても良いとされ、法定相続分より指定相続分が優先されます。(遺留分に注意)

自宅(不動産)は妻に、現金は子供に相続されるなど、相続分の指定を生前に行っておくことによって相続争いを避けることができます。

遺言がない場合は、相続人同士で協議し相続分を決めることになりますが、次のポイントに注意しながら協議を進めましょう。

①法定相続分の主張を固持しない
民法の法定相続分の規定は絶対に従わなければならないものではありません。相続人全員が話し合って同意した相続分であれば、法定相続分とあっていなくても構いません。

法定相続分の主張を行うのは、争いになってからでも遅くない為、話のきっかけ程度にとどめておくようにしましょう。

相続分の協議は、相手や自分の様々な事情を話し合って思いやりの中で進めることが大切です。

②「とりあえず共有」はあとが大変
現金などは平等に分けられますが、不動産などの分けられないもの(不可分財産)は、「とりあえず共有にしておく」とするケースが多く見受けられます。

不動産は共有にすると、「売却」する場合も、「賃貸」する場合も、所有者全員の同意が得られないと行動が出来ず、「何もできない状況」におかれることとなります。

その先の相続が発生するとさらに所有者が増え、手が付けられない財産の現況にもありかねないため、最後まで「共有にする」という選択肢は避けた方がよいでしょう。

③親の財産は明らかにしておく
親の全ての財産をまとめた財産目録を作成するようにしましょう。兄弟といえども、財産についてはデリケートです。

出来るだけ細かく財産目録を作成し、全ての財産をはっきりしてから協議を行うようにしましょう。

④「同居」「介護」には理解を示そう
親と同居している家族や、介護をしてくれた兄弟の配偶者がいる場合は、生前行っていた親に対する行動に対し、理解を示すようにしましょう。

相続が発生したので、「法定相続分通り平等に分けて、実家は売りましょう。」では、高い確率で争いに発展します。

民法には「寄与分」の項目がありますが、判例では「単なる同居は寄与分に値しない」とされています。相互扶養義務の規定からくる見解ですが、同居し介護をしてくれた兄弟や配偶者に対して、最初からこれを言うことは争いの原因となります。

 

4-1-3.協議がまとまらない場合

相続人の話し合いでどうしても結論が出ない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行うことになります。遺産分割調停も不成立の場合は、自動的に遺産分割審判に移行し、最終的には裁判所がどのように遺産を分割すべきかを決定します。

 

4-2.相続した不動産の売却手続き

相続した不動産は、所有権が相続人の為、一般的な不動産売却手順と変わりません。ただし、不動産の名義変更登記が済んでいない場合は、相続人の名前に名義変更登記を行う必要があります。

相続不動産売却手続き

ひとつひとつ説明します。

 

4-2-1.相続人名義に相続登記を行う。

遺産分割協議が親族間で合意され、遺産分割協議書を作成したとしても、法務局の登記簿謄本は親(被相続人)名義のままです。

親名義のままでは、不動産売却が進められないため、相続人名義に相続登記を行う必要があります。

相続登記に必要な書類は次の通りです。

相続登記必要書類

特に被相続人の戸籍謄本は出生から死亡までの全ての戸籍取得が必要となるため、早めに準備を進めておきましょう。

■注意点

実家を相続した相続人が複数いる場合で、売却する実家が「相続空き家の3,000万円控除」(後述)の対象となる場合は、すべての相続人が土地と建物に持分登記を行うようにしてください。

しばしば、売却を簡便にするために、代表者1人の名義に相続登記を行い、売却後現金で分配を行う方が見受けられますが、登記されていない相続人は特別控除を受けられなくなります。

 

4-2-2.相続人が不動産を売却する不動産会社を選定し、媒介契約を締結する。

不動産の所有権は相続登記であなたに移転しているので、ここから先の手順は一般的な不動産売却と変わりません。ただし、不動産の相続人が複数いる(共有者がいる)場合は、媒介契約を締結する際に全員の合意と署名・捺印が必要となります。

不動産売却を代表者一人に依頼する場合は、共有者から代表者に対して委任状が必要となります。

委任状は以下に委任状( Word用 )を添付しておきますので、お使い下さい。

不 動 産 売 却 委 任 状(ダウンロードはこちら)

4-2-3.買主が見つかったら、売買契約を締結する。

買主が見つかったら、売買契約を締結します。売買契約も媒介契約同様に相続人全員の合意が必要です。

 税務上、「相続空き家の3,000万円控除」を利用する場合は、次の点に注意してください。

 

①売買金額の総額が1億円を超えないこと。※

②引渡までに、建物の解体若しくは新耐震基準に適合したリフォームが必要であること。

※売買金額が1億円でも、固定資産税の清算金などを受け取ってしまうと、1億円を超えると判断されるため、9,990万円などが望ましい。

 

4-2-4.残代金を受領し、相続人から買主に所有権が移転する。

残代金を受け取るのと同時に相続人から買主に所有権が移転します。

受取った残代金は、遺産分割協議に沿って出来るだけ早く各々の相続人に分配するようにしましょう。

 

4-2-5.相続空き家の3,000万円控除

相続の直前まで親が居住していた実家の売却であれば、相続空き家の3,000万円控除が利用できます。

相続空き家の3,000万円控除は適用要件が多く複雑な税制です。しかし、よく理解してから相続登記→不動産売却と進めないと適用できない事態になるため、売却後では遅い!自宅や実家を売る前に絶対抑えるべき税金を徹底解説で適用要件を確認するようにしましょう。

特に複数人の相続人がいる場合、控除額は合計で1,000万円を超えることもあるため、利用できる場合は確実に利用するようにしましょう。

 

第5章 まとめ

 

実家には、深い思い入れがあることが多く、杓子定規に損得だけで売却することを決定するのは難しいのかもしれません。

しかし、同時に親族や家族のことを考える大切な機会かもしれません。

少なくとも争いに発展しないように、時には専門家の意見も素直に聞くことが重要になってくるかもしれません。

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